このページではピタゴラス音律で音階を設計した後に,この音律の特徴を確認します.
【キーワード】ウルフの5度,ピタゴラス・コンマ,シントニック・コンマ,純正完全五度
音の周波数が単純な整数比同士だと響きが綺麗であることを発見したピタゴラスの設計した音律です.
完全五度が綺麗に響くように1オクターブ上がると周波数が2倍,完全五度の周波数の比率が 3:2 の音程の積み重ねになるように音階を設計したものがピタゴラス音律です.
以下のコードで,ピタゴラス音律でのC4~C5までの周波数を表示できます.(A4=440Hzの場合)
実際には,後述するウルフの発生する場所を調整するために単純に上げ続けるわけではないのですが,分かりやすさのためにC4から3/2倍を積み上げ続けて求めています.※1
※1 セントの列についてWikipediaや音律について 菅 千索の表と一致させたい場合はEから見て(E♯ではなく)Fを採用すると一致します.
import math
# A4 = 440Hz から逆算した C4
C4 = 260.741
# --- ひたすら五度(3/2倍)を積み上げていく ---
# 1. G4
G4 = C4 * (3/2)
# 2. D4 (D5を1/2にする)
D4 = (G4 * 3/2) / 2
# 3. A4
A4 = D4 * (3/2)
# 4. E4 (E5を1/2にする)
E4 = (A4 * 3/2) / 2
# 5. B4
B4 = E4 * (3/2)
# 6. F#4 (F#5を1/2にする)
Fs4 = (B4 * 3/2) / 2
# 7. C#4 (C#5を1/2にする)
Cs4 = (Fs4 * 3/2) / 2
# 8. G#4
Gs4 = Cs4 * (3/2)
# 9. D#4 (D#5を1/2にする)
Ds4 = (Gs4 * 3/2) / 2
# 10. A#4
As4 = Ds4 * (3/2)
# 11. E#4 (E#5を1/2にする) (ピタゴラス音律ではではE#4 != F4)
Es4 = (As4 * 3/2) / 2
# 12. C4を2倍してC5
C5 = C4 * 2
# 13. F4 (F3を2倍にする)
F4 = (C4 / (3/2)) * 2
# --- 結果の表示 ---
notes = {
"C4": C4,
"C#4": Cs4,
"D4": D4,
"D#4": Ds4,
"E4": E4,
"E#4": Es4,
"F4": F4,
"F#4": Fs4,
"G4": G4,
"G#4": Gs4,
"A4": A4,
"A#4": As4,
"B4": B4,
"C5": C5
}
ordered_keys = ["C4", "C#4", "D4", "D#4", "E4", "E#4", "F4", "F#4", "G4", "G#4", "A4", "A#4", "B4", "C5"]
print("音名 | 周波数 (Hz) | C4を基準としたセント")
print("-" * 25)
for key in ordered_keys:
print(f"{key:<6} | {notes[key]:<11.3f} | {1200*math.log2(notes[key]/C4):.3f}")
print()
# ピタゴラスコンマの検証
print("ピタゴラス・コンマ: ピタゴラス音律では平均律と違い異名同音の周波数が異なる このズレをピタゴラス・コンマと呼ぶ")
print(f"E#4:{round(Es4,2)} ≠ F4:{round(F4,2)}")
print(f"ピタゴラス・コンマ = {1200*math.log2(Es4/F4):.3f} Cents → 半音1/4個分くらい狭い")
print()
# ==============================
# ウルフの五度の検証
# 本来,A#3の5度上はE#4だが,鍵盤楽器ではF4で代用
FA_ratio = F4 / (As4/2)
perfect_fifth = 3/2
print("ウルフの五度: F4を採用したとしてA#3とF4(本来はE#4を鳴らすべき)を鳴らすと...")
print(f"A#3からF4への実際の比率: {FA_ratio:.4f}")
# ズレをCentsで計算
diff_cents = 1200 * math.log2(perfect_fifth / FA_ratio)
print(f"純正五度(3/2)とのズレ: {round(diff_cents,3)} Cents → 純正五度より狭く和音が濁ってしまう")
print()
# シントニック・コンマの検証
CE_ratio = E4 / C4
major_third = 5/4
print("シントニック・コンマ: 純正長三度と実際の長三度のズレをシントニック・コンマと呼ぶ")
print(f"C4からE4への実際の比率: {CE_ratio:.4f}")
# ズレをCentsで計算
diff_cents = 1200 * math.log2(CE_ratio / major_third)
print(f"純正長三度(5/4)とのズレ: {round(diff_cents,3)} Cents → 純正長三度より広く和音が濁ってしまう")
音名 | 周波数 (Hz) | C4を基準としたセント
-------------------------
C4 | 260.741 | 0.000
C#4 | 278.438 | 113.685
D4 | 293.334 | 203.910
D#4 | 313.242 | 317.595
E4 | 330.000 | 407.820
E#4 | 352.398 | 521.505
F4 | 347.655 | 498.045
F#4 | 371.250 | 611.730
G4 | 391.111 | 701.955
G#4 | 417.657 | 815.640
A4 | 440.000 | 905.865
A#4 | 469.864 | 1019.550
B4 | 495.000 | 1109.775
C5 | 521.482 | 1200.000
ピタゴラス・コンマ: ピタゴラス音律では平均律と違い異名同音の周波数が異なる このズレをピタゴラス・コンマと呼ぶ
E#4:352.4 ≠ F4:347.65
ピタゴラス・コンマ = 23.460 Cents → 半音1/4個分くらい狭い
ウルフの五度: F4を採用したとしてA#3とF4(本来はE#4を鳴らすべき)を鳴らすと...
A#3からF4への実際の比率: 1.4798
純正五度(3/2)とのズレ: 23.46 Cents → 純正五度より狭く和音が濁ってしまう
シントニック・コンマ: 純正長三度と実際の長三度のズレをシントニック・コンマと呼ぶ
C4からE4への実際の比率: 1.2656
純正長三度(5/4)とのズレ: 21.506 Cents → 純正長三度より広く和音が濁ってしまう
実行結果を見ていただくと分かるように,現代の平均律では同一視される異名同音(E♯とFなど)の周波数が異なっています.
このズレをピタゴラス・コンマと呼びます.
鍵盤楽器などの固定ピッチの楽器では異名同音のどちらかを選んで調律しなければなりませんが,Fの周波数で調律した場合,A♯とE♯で弾くべきところをA♯とFで弾くことになり,うなりが発生します.
このズレている完全五度をウルフの五度と呼びます.
ウルフの五度さえ踏まなければ五度が純正で弾けるのですが,ピタゴラス音律の設計上,1か所に必ずこのようなズレが生じてしまいます.(※1)
以下は電子音ですが,和音を鳴らすと音がウルフの五度はうなって不安定になっています.
※1. 完全5度を12回積み上げたものと7オクターブ上げたものを比較すると (3/2)^12 ≒ 129.7 > 128 = 2^7 なので微妙に高い音になり必ずどこかに誤差が発生してしまいます.
設計当初は問題ではなかったのですが,完全五度の二和音だけでなく,長三度・完全五度の三和音を弾きたくなってくると,ピタゴラス音律では問題が生じます. 実行結果を見るとC4とE4の周波数比率が1.2656となっており純正の1.25よりも21.51セントほど広いです. これにより長三度にも濁りが発生します. この純正長三度とピタゴラス音律の長三度のズレをシントニック・コンマと呼びます.
実際に演奏された曲を聞いてみたい場合はこちらのサイトがオススメです.
【関連(外部サイト)】聴き比べ:古典音律(ピタゴラス音律、純正律、中全音律、ウェル・テンペラメント)と平均律
【参考(外部サイト)】ピタゴラス音律 - Wikipedia
【参考(外部サイト)】ピタゴラス ピタゴラスと音楽 - Wikipedia