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ガチャの確率と計算式
ガチャの確率計算式についてです.
身近なガチャについて具体的な例を用いて実際に計算してみます.
1から6までは簡単な計算ですが,7は場合の数 確率に慣れていないと少し難しいかもしれません.(数Aの内容)
8は数Bの確率分布の内容ですが,ほとんどの高校では習わない内容です.
高校1年生レベルの数学がスラスラ解ける方にとっては退屈な内容かもしれません.
自分で計算したくない方は ガチャ確率計算機 をご活用ください.
確率の基礎
単発で当たる確率・外れる確率
10回引いて当たらない確率
10回引いて1回以上当たる確率
10回引いてn回当たる確率
入手確率n%を達成するために必要な試行回数
WPUで2枚当たる確率
確率操作を疑う
参考文献
1.確率の基礎
ガチャ確率の計算をする前に確率の基本事項をまとめておきます.
数学Aの教科書に書いてあることを具体例を交えて簡単に説明します.
これらの確率に関するルールさえ理解してしまえばガチャの確率を簡単に計算することができます.
(1) 確率
ある事象の起こりやすさを0から1までの数字で表したものです.
確率0であれば絶対に起こらず,確率1であれば必ず起こります.
確率0.1 というとなじみが薄いかもしれませんが, 確率10% と読み替えることができます.
確率0 = 0% 確率1 = 確率100%
(2) 試行・試行回数
同じ条件のもとで繰り返すことのできる実験や観測を「試行」と言います.
また,これを繰り返して行った回数を「試行回数」と言います.
ガチャで考える場合は,試行 = ガチャを引くこと,試行回数 = ガチャを引いた回数に読み替えられます.
(3) 事象
試行の結果として起こる事柄のことを「事象」と言います.
ガチャで考えるならば,試行の結果起こる事象は「星3のキャラが出る」や「星4のキャラが出る」などです.
(4) 排反・排反事象
2つの事象A, Bが同時に起こらないとき, 「A, Bは互いに排反である」または,「A, Bは互いに排反事象である」と言います.
基本的にはガチャの排出率はレアリティ別に記載されており,1回ガチャを引いて「星4が出る」と「星3が出る」が同時に起こることは無いので余り気にしなくてもいいです.
(5) 和事象
A または B が起こる事象のことを「和事象」といいます.
事象A, Bが互いに排反である場合は単純に「Aが起こる確率」と「Bが起こる確率」を足し合わせることで「AまたはBが起こる確率」を求めることができます.(確率の加法定理)
レアリティ別で考える場合は1回引いて「星4が出る」と「星3が出る」は互いに排反なのでそれぞれの排出率を足し合わせれば「星4 または 星3が出る確率」が求められます.
(6) 余事象
事象A に対して Aが起こらない という事象をAの「余事象」と言います.
試行に対して「事象Aが起こる」か「事象Aが起こらない」の2パターンしかなく,互いに排反であるので (事象Aが起こる確率) + (事象Aが起こらない確率) = 1 になります.
例えばガチャで考えると,「星4が出る」の余事象は「星4が出ない」で (星4が出ない確率) = 1 - (星4が出る確率)で求めることができます.
「Aが起こる確率」より「Aが起こらない確率」の方が求めやすい場合は余事象を考えると計算が楽になります.
(7) 独立・独立な試行
A, Bの2人がサイコロを投げる場合,Aの結果はBの結果に影響を与えませんし,Bの結果はAの結果に影響を与えません.
このように試行の結果が互いに影響を及ぼさないような場合,これらの試行は「独立」であると言います.
通常の単発ガチャでは1回目のガチャ結果は2回目のガチャ結果に影響を及ぼしませんので,独立した試行です.
(8) 独立な試行の確率
2つの試行SとTが独立であるとき,Sで事象Aが起こり,かつ Tで事象Bが起こる確率は
(SでAが起こる確率) * (TでBが起こる確率) で求めることができます.
例えば,友達と一緒にガチャを引くときにお互いが単発で星4を引く確率は
(自分が星4を引く確率) * (友達が星4を引く確率) で求めることができます.
2.単発で当たる確率・外れる確率
単発ガチャの確率は和事象と余事象を考えることで計算できます.
つまり,簡単な足し算・引き算で計算することができます.
例1.
3%の確率で当たりが出て,それ以外はハズレのガチャを考えます.
当たり前ですが,このガチャを1回引いて当たる確率は3%です.
また,外れる確率は当たるか外れるかの2パターンしかないので97%です.(「当たらない」=「当たるの余事象」)
百分率(パーセント) 分数 小数のどれで考えても構いません.
(百分率) 100% - 3% = 97%
(分 数) 100/100 - 3/100 = 97/100
(小 数) 1 - 0.03 = 0.97
例2.
3%の確率で星3,17%の確率で星2,80%の確率で星1が出るガチャを考えます.
1回引いて星3か星2が出る確率は 3% + 17% = 20%です.
※「星3が出る」と「星2が出る」は互いに排反なので単純に足し合わせればよい(確率の加法定理)
(百分率) 3% + 17% = 20%
(分 数) 3/100 + 17/100 = 20/100
(小 数) 0.03 + 0.17 = 0.20
3.10回引いて当たらない確率
3%の確率で当たり,97%の確率でハズレのガチャを考えます.
1回外れる確率は97/100です.
2回外れる確率は(97/100) * (97/100) = (97/100)**2です.(1回目と2回目の結果は独立なので確率をかけ合わせればよい)
この計算を繰り返すと10回引いても当たらない確率は(97/100)**10です.
4.10回引いて1回以上当たる確率
10回引いて1回以上当たるという事象は10回引いて1回も当たらない事象の余事象です.
よって,10回引いて1回以上当たる確率は1 - (97/100)**10です
5.10回引いてn回当たる確率
少し難しいです.
(1) まず,具体的にn=1の場合で考えてみます.
1回目で当たって以降の9回外れる確率は
(3/100) * (97/100) * ... * (97/100)です.
2回目で当たってそれ以外はハズレの確率は
(97/100) * (3/100) * (97/100) * .. * (97/100)です.
m回目で当たってそれ以外ハズレの確率はそれぞれ(3/100)*((97/100)**9)です.
これがm=1~10までの10通りあるので10*(3/100)*((97/100)**9)が求める確率になります. (確率の加法定理)
(2) 次にn=2の場合を考えます.
10回中2回当たる場合の数は1から10の数字から2つの数字を選び取って何回目に当たるかを決めればいいので,10C2です.
指定した2回(例えば1回目と2回目)に当たって,それ以外の8回外れる確率は((3/100)**2) * ((97/100)**8)です.
これに場合の数をかけて10C2 * ((3/100)**2) * ((97/100)**8) が求める確率です.
同様に考えると,10回引いてn回当たる確率は10Cn * ((3/100)**n) * ((97/100)**10-n)です.
6.入手確率m%を達成するために必要な試行回数
当たり確率が3%のガチャを考えます.
ガチャをn回引いて1回以上当たる確率は余事象(n回連続で外れる)を考えて 1 - (97/100)**n です.
nが増えるほど連続で外れる確率は減っていきます.
n回引いて入手できる確率 1 - (97/100)**n が mを超えるような最小のnを求めれば必要な試行回数が分かります.
具体的にm=0.95(入手確率95%)で考えると,当選確率3%のガチャで入手確率95%を達成するためには必要な試行回数は99回であることが分かります.
7.WPUで2枚当たる確率
ガチャの中にはピックアップキャラが2体以上いる いわゆるWPU(ダブルピックアップ)というものが存在します.
このガチャで目玉キャラを2種類とも引く確率を考えます.
具体的には星4が出る確率3% ピックアップキャラAが出る確率を0.75% ピックアップキャラBが出る確率を0.75% として100回ガチャを引くことを考えます.
(1) 2種類とも当たる確率
Aがl回に出て,Bがk回出る場合の数は100!/l!k!(100-k-l)!です.(l個の黒玉 k個の白玉 (100-k-l)個の赤玉を並べる場合の数)
最初のl回Aが出て,次のk回Bが出てそれ以外はハズレの確率が
((0.75/100)**l) * ((0.75/100)**k) * ((98.5/100)**(100-k-l))ですから,Aがl回に出て,Bがk回出る確率は
(100!/l!k!(100-k-l)!) * ((0.75/100)**l) * ((0.75/100)**k) * ((98.5/100)**(100-k-l)) です.
オーバーフローに気を付けつつすべての(l,k)に対して計算すると約27.8%になります.
(2) 1種類だけ当たる確率
Aがl回出て,それ以外はB以外が当たる確率は
100Cl * ((0.75/100)**l) * ((98.5/100)**(100-l)) です
l=1~100までの和を取ると約25%になります.
Aだけ当たる確率は25%,Bだけ当たる確率も同様に25%になります.
(3) 目玉キャラが当たらない確率
単純に(98.5/100)**100 で求めることができます.百分率に直すと約22%になります.
WPUのガチャに関して計算したい場合はガチャ確率計算機 をご活用ください.
8.確率操作を疑う
ガチャを何度も引いて当たらないと確率を疑いたくなることがあります.
感覚で確率操作だと断定する前に計算をしてみます.
厳密に説明しようとすると,二項分布とか中心極限定理とか母比率の検定とか普通に生活してたら馴染みのない単語がたくさん出てくるので気になる方は参考文献を読んでみてください.
(確率分布を選択する場合,高校2,3年生 そうでない場合は大学1,2年生で習う内容です.)
いくつかのケースで確率が表示通りなのかを検証してみます.
当選確率3%と表示されているガチャについて片側検定を行う.(ベルヌイー分布・二項分布の母比率の大標本検定)
α=0.01 (有意水準)
H_0: p=0.03 (帰無仮説)
H_1: p<0.03 (対立仮説)
検定は
n: ガチャを引いた回数
p: 提供割合で表示されている確率
X': (当たった回数)/n
を用いて,(X'-p)/((p(1-p)/n)**0.5) が(近似的に)標準正規分布に従うことを利用して行います.
具体的には(X'-p)/((p(1-p)/n)**0.5) < -2.33 を満たせば帰無仮説を棄却します.
例1. 当選確率3%と表示されているのガチャを100回引いて一度も当たらなかった.
n = 100
p = 0.03
X' = 0
で(X'-p)/((p(1-p)/n)**0.5)を計算すると,-1.75となり,
(X'-p)/((p(1-p)/n)**0.5) < -2.33を満たしません.
帰無仮説は棄却されません.
例2. 当選確率3%と表示されているのガチャを200回引いて一度も当たらなかった.
n = 200
p = 0.03
X' = 0
で(X'-p)/((p(1-p)/n)**0.5)を計算すると,-2.48となり,
(X'-p)/((p(1-p)/n)**0.5) < -2.33を満たします.
帰無仮説は棄却されます.(p<0.03であることが疑われる)
例3. 当選確率3%と表示されているのガチャを200回引いて1回しか当たらなかった.
n = 200
p = 0.03
X' = 0.005
で(X'-p)/((p(1-p)/n)**0.5)を計算すると,-2.07となり,
(X'-p)/((p(1-p)/n)**0.5) < -2.33を満たしません.
帰無仮説は棄却されません.
例4. 当選確率3%と表示されているのガチャを600回引いて3回当たった
n = 600
p = 0.03
X' = 0.005
で(X'-p)/((p(1-p)/n)**0.5)を計算すると,-3.58となり,
(X'-p)/((p(1-p)/n)**0.5) < -2.33を満たしません.
帰無仮説は棄却されます.(p<0.03であることが疑われる)
あなたのガチャ結果が下位何%の結果であったかは爆死チェッカー で計算することができます.
9.参考文献
8以外に関しては数Aの教科書やチャートを見れば,同じような式が載っています.(反復試行の確率)
受験生向けには『大学への数学 1対1対応の演習 数学A』は場合の数・確率・整数(・図形)が綺麗にまとまっており1対1対応の演習の中でも特に出来がいいのでおすすめです.
8の内容が気になる方は私は持っていませんが,『統計学入門』(東京大学教養学部統計学教室 編)がいいらしいです.
倉田博史・星野崇宏(2016)『入門統計解析』新世社
学部1年生の統計学の授業で教科書指定されていました.
4章までで数B程度の確率分布までを復習し,以降の章で基礎的な統計学の知識を学べます.
8でやった検定は本書の8章,検定・区間推定は6, 7, 8章です.
J.C.ミラー著、村上正康訳(2000)『統計学の基礎』培風館
具体例や問題が豊富なのでイメージしやすいです.解説の親切さは入門統計解析より劣ります.
二項確率の仮説検定に基づくサンプルサイズ設計 https://nshi.jp/contents/js/onebinom/
二項確率の仮説検定に基づくサンプルサイズ設計を行う Web アプリです.